「電力会社を切り替えるとお得になる」という話はよく聞きますが、デメリットやリスクを把握しないまま切り替えると、思わぬ落とし穴にはまるケースがあります。
実際に2022年の電力市場高騰では、市場連動型プランを契約していた家庭の電気代が一気に跳ね上がり、大きな問題になりました。メリットだけに目を向けるのではなく、リスクをしっかり理解したうえで判断することが大切です。
この記事では、電力会社の切り替えで起こりうるデメリットを5つ取り上げ、それぞれの回避策まで具体的に解説していきます。これから切り替えを検討している方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

デメリット1:市場連動型プランのリスク
電力自由化で登場した「市場連動型プラン」は、日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格に連動して電気料金が決まる仕組みです。市場価格が安いときは大幅に節約できますが、需給が逼迫すると電気代が一気に跳ね上がるリスクがあります。
2022年の冬には電力市場が高騰し、市場連動型プランを契約していた家庭では月の電気代が数万円も増えたケースが報告されました。通常月の電気代が8,000円程度だった家庭が、一時的に3万円以上の請求を受けたという事例もあります。こうした事態は頻繁に起きるわけではありませんが、一度でも発生すると年間の節約分が吹き飛んでしまうリスクがあります。
市場連動型プランは電力の仕組みに詳しい方や、市場価格の変動を日々チェックできる方向けの上級者向けプランと言えます。電力市場の動きを日常的にウォッチできない方や、毎月の電気代が安定しないと不安に感じる方は避けた方が賢明です。一般家庭では固定単価のプランを選ぶのが無難です。最近では市場連動型でも「上限単価」を設定しているプランが登場していますが、上限の設定金額によってはそれでも十分に高額になり得るため、上限の具体的な金額まで確認しておきましょう。
デメリット2:新電力会社の倒産・撤退リスク
新電力会社は大手と比べて経営基盤が小さいため、事業撤退や倒産の可能性があります。実際に2021年以降、電力市場の高騰を受けて撤退した新電力は70社以上にのぼります。
もしも契約先の新電力が倒産した場合、すぐに停電するわけではありません。地域の大手電力会社(東京電力や関西電力など)が「経過措置」として一時的に電気を供給してくれる仕組みがあります。ただし、その際の料金は割高な「最終保障供給」の料金が適用されるため、速やかに新しい電力会社と契約する必要があります。
新電力を選ぶ際は、その会社の資本金や親会社、これまでの供給実績などを確認しておくと安心です。大手ガス会社や通信会社の子会社であれば、経営基盤がしっかりしている傾向があります。東京ガスの電気、ENEOSでんき、auでんきなど、母体が大手企業の電力会社を選べば倒産リスクはほぼゼロと考えてよいでしょう。聞いたことのない名前の電力会社を検討する場合は、事前に会社概要ページで資本金や設立年を確認しておくことをおすすめします。
デメリット3:解約金がかかる場合がある
一部の新電力は1年から2年の最低契約期間を設定しており、期間内に解約すると違約金が発生することがあります。違約金の相場は2,000円から10,000円程度が多いですが、中には数万円に設定している会社もあります。
特に注意が必要なのは、キャッシュバックキャンペーンとセットになった契約プランです。「最大20,000円キャッシュバック」と書かれていても、2年間の契約期間内に解約すると違約金が発生し、実質的にキャッシュバック分を返金するのと同じことになるケースがあります。
契約前に必ず「重要事項説明書」を確認し、解約金の有無と金額を把握しておきましょう。解約金0円の電力会社も多く存在するので、そういった会社を優先的に選ぶのが賢い判断です。重要事項説明書はWeb申し込み画面の途中で確認できることがほとんどです。面倒でもスクロールして目を通しておくと、あとで「知らなかった」というトラブルを防げます。

デメリット4:ポイント還元の罠に注意
「月々の電気代の○%をポイント還元」「初年度○○ポイントプレゼント」といったキャンペーンは魅力的に見えますが、ポイントの使い道や有効期限に落とし穴があるケースが少なくありません。
例えば、もらえるポイントがその電力会社の独自ポイントだった場合、使い道が限られます。Tポイントや楽天ポイントなど汎用性の高いポイントならまだしも、独自ポイントは利用先が限定されてしまい、実質的な節約効果が薄れてしまいます。
また、ポイント還元を含めた「実質料金」で安さをアピールしている会社でも、ポイントを差し引いた純粋な電気料金だけで比較すると他社より高いということもあります。料金比較をする際は、ポイント還元を含まない金額でも必ず確認するようにしましょう。初年度だけ大量ポイントがもらえるキャンペーンの場合、2年目以降は通常のポイント還元率に戻ることがほとんどです。長期的なコストパフォーマンスで判断するためにも、2年目以降の実質料金を基準に比較することが重要です。
デメリット5:比較に手間がかかる
2026年現在、登録されている小売電気事業者は700社を超えています。この中から自分に最適なプランを見つけるのは正直なところ簡単ではありません。各社で料金体系が異なり、基本料金の有無、従量料金の段階設定、時間帯別プランなど、比較すべきポイントが多岐にわたります。
さらに、同じ電力会社でもエリアによって料金が異なるため、「東京エリアでは最安でも、関西エリアでは割高」ということも起こります。比較に時間をかけたくない方は、エネチェンジなどの比較サイトを使って自分の使用量に合った最適プランを自動計算してもらうのがおすすめです。比較サイトなら検針票の数字を入力するだけで主要な電力会社の料金が一覧表示されるので、自分であれこれ調べる手間が大幅に省けます。5分もあれば十分に比較が完了します。
デメリットを回避するための具体策
ここまで5つのデメリットを紹介しましたが、実はどれもしっかり対策すれば回避できるものばかりです。以下の3つのポイントを押さえておけば、安心して電力会社を切り替えられます。
固定料金プランを選ぶ
市場連動型プランを避け、固定単価の料金プランを選べば、市場価格の変動リスクを完全に回避できます。固定プランでも大手電力より安いケースは多いので、まずはこちらから検討するのがおすすめです。固定プランなら毎月の電気代が安定するため、家計の見通しが立てやすくなるのもメリットです。
経営基盤の安定した会社を選ぶ
大手ガス会社や通信会社の系列企業、あるいは大手電力の新料金プランなら倒産リスクはほぼゼロです。安さよりも安定性を重視したい方は、こうした会社を優先的に選びましょう。
解約金0円の会社を優先する
乗り換えの自由度を確保するために、解約金のない会社を選ぶのが賢明です。「合わなかったらすぐ戻せる」という安心感は、初めて切り替える方にとって大きなメリットになります。
電力切り替えに関するトラブル事例は資源エネルギー庁の公式サイトで確認できます。また、契約トラブルに遭った場合は国民生活センターに相談することも可能です。

まとめ
電力会社の切り替えには、市場連動型プランのリスク、新電力の倒産リスク、解約金、ポイント還元の罠、比較の手間という5つのデメリットがあります。しかし、これらは事前に知っておけば十分に回避できるものです。
固定料金プランを選び、経営基盤の安定した会社を選び、解約金0円を確認する。この3つを守れば、安心して電力会社を切り替えられます。デメリットを正しく理解した上で、賢くお得な電力会社を選んでいきましょう。年間数千円から数万円の節約は、正しい知識を持って行動すれば十分実現できます。

