新電力の倒産は他人事ではない
新電力への切り替えを検討するとき、多くの方が気になるのが「もし契約している会社が倒産したらどうなるの?」という疑問です。
実は、新電力の事業撤退や倒産は決して珍しいことではありません。2021年〜2022年にかけて原油価格やLNG(液化天然ガス)価格の高騰を受けて、多くの新電力が経営難に陥りました。2024年9月時点で小売電気事業者は734社登録されていますが、そのうち123社が休止・廃止・解散・取消の状態にあります。
しかし結論から言うと、契約している新電力が倒産しても、電気がいきなり止まることはありません。国のセーフティネットが整備されているからです。この記事では、新電力の倒産リスクと具体的な対処法を詳しく解説します。

新電力が倒産しても電気が止まらない理由
電力供給の仕組みを理解すると、なぜ電気が止まらないかがわかります。
そもそも電気は、発電所で作られた電気が送配電会社の送電網を通じて各家庭に届けられています。送配電会社は大手電力会社のグループ企業(東京電力パワーグリッド、関西電力送配電など)であり、新電力が倒産しても送電網そのものは影響を受けません。
新電力の役割は「電気の小売り」であり、物理的に電気を届ける部分は送配電会社が担当しています。つまり、小売会社が変わっても送電の仕組み自体は変わらないのです。
最終保障供給の仕組み
資源エネルギー庁は、新電力が事業撤退した場合に備えて「最終保障供給」という仕組みを整備しています。
- 新電力が事業撤退すると、地域の一般送配電事業者が「最終保障供給」として電気を届ける
- 最終保障供給への移行は原則自動で行われるため、利用者が何か手続きをする必要はない
- 電気が途切れることなく、シームレスに供給が続く
ただし重要な注意点があります。最終保障供給の料金は通常のプランよりも割高に設定されているため、長期間そのまま利用し続けるのは損です。撤退通知を受けたら、できるだけ早く次の電力会社を見つけて切り替えましょう。
新電力が倒産したときの具体的な対処手順
契約している新電力から撤退通知が届いた場合、以下の手順で対応します。
- 撤退通知を確認する:電力会社は供給契約の解除15日程度前までに解除予告通知を行う義務がある
- 通知内容をチェック:供給停止日、最終保障供給への移行方法、次の電力会社探しの案内などが記載されている
- 新しい電力会社を選ぶ:エネチェンジなどの比較サイトで料金シミュレーションを行い、次の会社を決める
- Web申し込み:新しい電力会社のサイトから申し込む(検針票のお客さま番号が必要)
- 切り替え完了:通常2週間〜1カ月程度で新しい会社からの供給が始まる
ポイントは「通知が届いたらすぐに行動すること」です。最終保障供給の割高な料金で長期間過ごすのは家計にとってもったいないので、早めに次の会社を見つけましょう。

新電力が倒産する主な原因
新電力の事業撤退が増えた背景を理解しておくと、リスクの低い会社を見極める判断材料になります。
原油・LNG価格の高騰
2021年後半から2022年にかけて、原油やLNGの価格が急騰しました。新電力の多くはJEPX(日本卸電力取引所)から電力を調達していますが、燃料費の上昇に伴い卸電力価格も高騰。仕入れ値が小売価格を上回る「逆ざや」状態に陥り、経営を維持できなくなった会社が続出しました。
自社発電所を持たない事業構造
自社で発電所を持たず、すべてJEPXからの調達に頼っている新電力は、市場価格の変動をモロに受けるため経営リスクが高い傾向があります。一方、自社発電所を保有する会社や、ガス・石油などの燃料供給チェーンを持つ会社は、調達コストを安定させやすい強みがあります。
極端な安値競争
顧客獲得のために原価割れギリギリの安値でプランを提供していた会社は、市場環境が悪化した際に一気に経営が厳しくなります。極端に安い料金を提示している会社は、長期的な経営の持続性に不安がある点を覚えておきましょう。
倒産リスクが低い新電力の特徴
新電力を選ぶ際に、倒産リスクを下げるためのチェックポイントを紹介します。
- 大手企業のグループ会社:東京ガス、ENEOS、中部電力グループなどは経営基盤が強固
- 自社発電所を保有している:市場価格の変動に左右されにくい
- 複数の事業を展開している:電力事業だけに依存していない会社はリスクが分散されている
- 契約者数が多い:一定の顧客基盤を持つ会社は事業の安定性が高い
具体的には、東京ガスの電気、ENEOSでんき、CDエナジーダイレクト(中部電力×大阪ガスの合弁)、auでんき(KDDIグループ)などは、親会社・グループの経営基盤がしっかりしているため、倒産リスクは相対的に低いといえます。

過去に事業撤退した新電力の事例
過去の事例を見ておくと、どのような会社がリスクを抱えているか把握できます。
2022年には電力市場の高騰を受けて、複数の新電力が新規契約の停止や事業撤退を発表しました。共通していた特徴は、自社発電所を持たずJEPXへの依存度が高いこと、そして顧客獲得のために極端な安値競争を行っていたことです。
こうした会社の利用者は最終保障供給に移行した後、別の電力会社への切り替えを余儀なくされました。ただし電気の供給自体が途切れたケースはなく、セーフティネットが機能していたことが確認されています。
万が一に備えてやっておくべきこと
現在新電力を利用している方、またはこれから切り替えを検討している方に向けて、万が一の倒産に備えたポイントをまとめます。
- お客さま番号と供給地点特定番号を控えておく:次の会社への切り替えに必要
- 直近の検針票や使用量データを保管する:新しい会社への申し込み時に参考になる
- 候補となる電力会社を2〜3社ピックアップしておく:いざという時にすぐ切り替えられる
- 契約中の会社のお知らせメールを受信設定にしておく:撤退通知を見逃さないため
電力会社の切り替え手順については電力会社の切り替え方法の記事で詳しく解説しています。
まとめ:倒産リスクは対策で十分カバーできる
新電力の倒産リスクは確かに存在しますが、国のセーフティネットがあるため電気がいきなり止まることはなく、落ち着いて対処すれば問題ありません。
大切なのは、経営基盤のしっかりした会社を選ぶこと、そして万が一に備えて切り替えに必要な情報を手元に準備しておくことです。
新電力のデメリット全般については新電力のデメリット解説記事でも詳しくまとめているので、あわせてチェックしてみてください。

