新築やリフォームの際に「オール電化にするかガス併用にするか」で迷う人は多い。最近ではエコキュートの性能が向上し、オール電化を選ぶ家庭が増えているが、一方でガスの火力にこだわる料理好きの方や、床暖房を使いたい方はガス併用を選ぶケースもある。どちらが得かは家族構成やライフスタイル、住んでいる地域によって異なるため、一概に「こちらが正解」とは言い切れない。
この記事では、オール電化とガス併用の光熱費の比較、それぞれのメリット・デメリット、向いている家庭の特徴まで詳しく解説する。自分の家庭にはどちらが合っているのか、判断材料にしてほしい。

オール電化とガス併用の光熱費を比較
まず最も気になる光熱費の比較から見ていこう。
オール電化の光熱費
オール電化住宅の電気代は月額約9,000円から17,000円程度で、世帯人数や使用量によって幅がある。ガス代がゼロになるため、光熱費は電気代のみで済む。2人以上の世帯の場合、月の光熱費の平均は約14,000円から17,000円程度だ。オール電化ではエコキュートが深夜の割安な電力を使ってお湯を沸かすため、夜間電力を活用するほどコストメリットが大きくなる。
ガス併用の光熱費
ガス併用住宅では、電気代とガス代の合計が光熱費になる。一般的な4人家族の場合、電気代が月約13,000円から14,000円、ガス代が月約5,000円から5,500円で、合計月約18,000円から20,000円程度になる。ただし都市ガスの場合とプロパンガスの場合でガス代が大きく異なり、プロパンガスでは月のガス代が7,000円から12,000円になることもある。
比較結果
一般的にはオール電化のほうがガス併用より月2,000円から3,000円程度安くなる傾向にある。年間で24,000円から36,000円の差だ。ただし、これは深夜電力を効率的に活用できている場合の話で、日中の電力消費が多い家庭(在宅ワークなど)ではオール電化のメリットが薄れることもある。
オール電化の光熱費が安くなるのは、エコキュートが深夜の割安な電力を使ってお湯を沸かすため。日中に電気を多く使うライフスタイルだと、オール電化のコストメリットが減少する。
オール電化のメリット
光熱費の基本料金が一本化される
オール電化ではガスの契約が不要になるため、ガスの基本料金(都市ガスで月800円から1,000円、プロパンガスで月1,500円から2,000円程度)が丸ごと不要になる。基本料金だけでも年間10,000円から24,000円の節約だ。請求もひとつにまとまるため、家計の管理がシンプルになるメリットもある。
火を使わないため安全性が高い
IHクッキングヒーターは火を使わないため、ガス漏れや引火のリスクがない。小さな子どもや高齢者がいる家庭では、安全面のメリットが大きい。夏場にキッチンが暑くならないのも、IHならではの快適さだ。
「IHで料理がしにくくないか」が気になる場合は、卓上タイプのIHクッキングヒーターで先に使い勝手を確かめてみる方法もある。コンセントに挿すだけで使えるので、切り替え前の判断材料にしやすい。
エコキュートで給湯コストが下がる
エコキュートは大気中の熱を利用してお湯を沸かすヒートポンプ式の給湯器で、電気温水器と比べて消費電力が約3分の1で済む。エコキュートの電気代は4人家族で月約2,000円から5,000円程度で、ガス給湯器(都市ガスで月約4,000円から6,000円)と比べてランニングコストが低い。
災害時にエコキュートの貯湯タンクが使える
エコキュートの貯湯タンク(370リットルから460リットル)に貯められたお湯は、災害時の生活用水として使うことができる。飲用には適さないが、トイレの水や手洗い、身体を拭くなどの用途には十分だ。

オール電化のデメリット
初期費用が高い
エコキュートの導入費用は工事費込みで40万円から70万円程度で、ガス給湯器の15万円から30万円と比べてかなり高額だ。IHクッキングヒーター(ビルトインタイプ)も10万円から30万円程度で、ガスコンロの5万円から20万円より高い。トータルの初期費用はガス併用と比べて20万円から50万円程度高くなることがある。
停電時にすべての設備が使えなくなる
オール電化の最大の弱点は停電時の脆弱性だ。ガス併用であれば停電中でもガスコンロで調理ができるが、オール電化では調理も給湯もすべてストップしてしまう。蓄電池や太陽光発電を併設すれば停電時のリスクを軽減できるが、さらに初期費用が増える。
据置型の蓄電池までは手が出ないという場合、持ち運べるポータブル電源を1台備えておくという選択肢もある。停電時に調理家電やスマホの電源を確保する目的で用意している家庭もある。
日中の電力消費が多いと割高になる
オール電化向けの電力プランは、深夜電力が安い代わりに日中の電力単価が高く設定されていることが多い。在宅ワークなどで日中の電力消費が多い家庭では、逆にガス併用よりも光熱費が高くなるケースがある。
エコキュートのメンテナンスと寿命
エコキュートの寿命は一般的に10年から15年程度。交換時にはまた40万円から70万円程度の費用がかかる。定期的なメンテナンス(年1回程度の水抜きなど)も必要だ。
ガス併用のメリット
初期費用が抑えられる
ガス給湯器やガスコンロの導入費用はオール電化と比べて安い。特に賃貸住宅ではガス設備が標準装備されていることが多く、追加の初期投資がほとんど不要だ。
火力の調整がしやすく調理の自由度が高い
ガスコンロは直火で調理できるため、中華料理のように強い火力が必要な料理や、鍋を振る調理に向いている。料理にこだわる方にとっては、これが大きなポイントだ。IHでも調理は十分可能だが、直火の感覚が好みという人も多い。
停電時でもガスコンロが使える
ガスコンロは停電中でも使用できるため、災害時に調理手段を確保できる。電池式の点火装置がついていれば、停電の影響を受けない。ガス給湯器は電気で制御するため停電時は使えないが、調理だけでも可能なのは大きなメリットだ。
ガス床暖房や乾太くんが使える
ガス床暖房は足元から部屋全体をじんわり温める快適な暖房で、エアコンのように乾燥しにくいのが特徴。また、リンナイのガス衣類乾燥機「乾太くん」は短時間でふわふわに仕上がると評判で、共働き家庭に人気がある。これらのガス設備を使いたい場合は、ガス併用一択になる。

ガス併用のデメリット
基本料金が二重にかかる
電気とガスの両方を契約するため、それぞれの基本料金が発生する。特にプロパンガスの場合は基本料金が月1,500円から2,000円と高く、年間で18,000円から24,000円の固定費になる。
ガス漏れや火災のリスクがある
ガスコンロは直火を使うため、消し忘れによる火災やガス漏れのリスクがある。最新のガスコンロにはSIセンサー(安全装置)が標準搭載されているが、それでもIHと比べるとリスクは高い。
プロパンガスの場合は光熱費が高くなりやすい
都市ガスであればガス併用でも光熱費は比較的抑えられるが、プロパンガスの場合は月のガス代が7,000円から12,000円にもなるため、オール電化と比べてトータルの光熱費が大幅に高くなるケースがある。
プロパンガスのまま暮らす場合は、コンロを使う時間を短くする工夫が効いてくる。短時間の加熱後に火を止めて余熱で仕上げる保温調理鍋は、煮込み料理が多い家庭で使われている道具のひとつだ。
オール電化が向いている家庭
- 日中は仕事や学校で家を空けることが多い家庭(深夜電力を活用できる)
- 小さな子どもや高齢者がいて、安全性を重視したい家庭
- プロパンガスエリアに住んでいて、ガス代が高い家庭
- 太陽光発電や蓄電池を併設する予定がある家庭
- 光熱費をシンプルに管理したい家庭
- 料理はそこまでこだわらず、IHでも構わない家庭
ガス併用が向いている家庭
- 料理好きで直火調理にこだわりたい家庭
- ガス床暖房や乾太くんを使いたい家庭
- 都市ガスエリアに住んでいて、ガス代がそこまで高くない家庭
- 在宅ワークなどで日中の電力消費が多い家庭
- 初期費用を抑えたい家庭(賃貸住宅含む)
- 停電時に調理手段を確保したい家庭
よくある質問
Q. オール電化からガス併用に戻すことはできる?
可能だが、ガス管の引き込みやガス機器の設置が必要になるため、都市ガスの場合は10万円から20万円程度の費用がかかる。プロパンガスの場合はボンベ設置と機器設置で数万円から10万円程度。一度オール電化にすると、ガス併用に戻すハードルは高い。
Q. マンションでオール電化にできる?
マンションによって異なるが、ガス配管を撤去してIHとエコキュートを設置する大規模な工事が必要になるため、管理組合の許可が必要。そもそもエコキュートの設置スペースがないマンションでは対応できない。新築分譲マンションでオール電化仕様のものを選ぶのが現実的だ。
Q. 太陽光発電とオール電化の相性は?
太陽光発電とオール電化は非常に相性がよい。日中に太陽光で発電した電力を自家消費できるため、日中の電力単価が高いオール電化プランのデメリットをカバーできる。さらに蓄電池を組み合わせれば、夜間も太陽光由来の電力を使えるため、光熱費を大幅に削減できる。
Q. 結局どちらがお得?
月々のランニングコストだけで比較すると、多くの場合オール電化のほうが安い。ただし初期費用の差(20万円から50万円)を回収するには5年から10年程度かかるため、住宅に長く住む予定があるかどうかも判断材料になる。都市ガスエリアで料理や床暖房にこだわる場合は、光熱費の差が小さいためガス併用でも十分お得だ。

まとめ
オール電化とガス併用の比較をまとめると、月々の光熱費はオール電化のほうが2,000円から3,000円程度安い傾向にある。ただし初期費用(エコキュート+IH)はガス併用と比べて20万円から50万円程度高い。
オール電化は安全性と光熱費の安さが魅力で、深夜電力を活用できるライフスタイルの家庭に向いている。一方、ガス併用は直火調理や床暖房、乾太くんが使えるのが魅力で、料理好きの家庭や都市ガスエリアの家庭に向いている。
判断に迷ったら、まずは現在の光熱費を把握し、オール電化にした場合のシミュレーションを行ってみよう。電力会社の比較にはエネチェンジ(https://enechange.jp/)、省エネに関する情報は資源エネルギー庁の「省エネポータルサイト」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/)が参考になる。また、メーカーの公式サイト(https://www.ac.daikin.co.jp/sumai/alldenka)でもオール電化の具体的なシミュレーションが可能だ。


