「高圧電力の電気代が年々上がっている」「法人の電力契約を見直してコストを下げたい」と考えている企業担当者は多いのではないだろうか。高圧電力は、契約電力が50kW以上の中〜大規模な事業所(ビル・工場・商業施設など)が対象となる電力契約だ。
電力自由化によって高圧電力も新電力への切り替えが可能になり、大手電力会社から乗り換えることで電気代を大幅に削減できる企業が増えている。ここでは、高圧電力の切り替え方法から、電力会社の選び方、手続きの流れと注意点まで詳しく解説する。

高圧電力とは?基本的な仕組みを理解しよう
高圧電力とは、受電電圧6,000V(6kV)以上で電気を受け取る契約形態のことだ。主に契約電力が50kW以上500kW未満の事業所が対象で、500kW以上になると「特別高圧」に分類される。
高圧電力を使う施設の例
- オフィスビル・テナントビル
- 中〜大規模の工場
- ショッピングセンター・商業施設
- 病院・クリニック(大規模)
- 学校・教育施設
- ホテル・旅館
- 大型スーパーマーケット
高圧電力の特徴
高圧電力は家庭向けの低圧電力とはいくつかの点で異なる。
- 受電設備(キュービクル)が必要:構内に変圧器を含む受電設備を設置し、6,000Vの電気を100V/200Vに変換して使用する
- 料金は個別見積もり:低圧電力と異なり、使用量や負荷率などに応じて個別に料金が設定される
- デマンド制による基本料金:過去1年間で最も大きかった30分間の電力使用量(デマンド値)に基づいて基本料金が決まる
- 電気主任技術者の選任が必要:高圧受電設備の保安管理のために、電気主任技術者を選任するか保安協会に委託する必要がある
高圧電力の切り替えで電気代はどれくらい下がる?
高圧電力を新電力に切り替えた場合、年間の電気代が5%〜20%程度削減できるケースが多いとされている。削減額は事業所の規模や使用パターンによって異なるが、年間電気代が500万円の事業所なら25万〜100万円のコスト削減も見込める計算だ。
削減できる理由としては、新電力は大手電力会社に比べて基本料金や従量料金の単価を低く設定していることが多いためだ。また、複数拠点を持つ企業の場合は請求の一元化による管理コストの削減効果もある。
契約単価の見直しと並行して、使う側の消費電力を落とす取り組みも進めておくと効果が重なる。事業所では、蛍光灯をLEDに置き換えて照明の消費電力を下げるところから着手する例が多い。

高圧電力の切り替え手順|5つのステップ
高圧電力の電力会社を切り替える手順は以下の通りだ。
ステップ1:現在の契約内容を確認する
まずは現在の電力契約の内容を把握しよう。確認すべき項目は以下の通りだ。
- 契約電力(kW)
- 月々の使用量(kWh)
- 月々の電気料金
- 契約期間と解約条件(解約予告期間があるか)
- デマンド値
これらの情報は検針票や電力会社からの請求書で確認できる。過去12か月分の検針票があると、新電力会社が精度の高い見積もりを出しやすくなる。
検針票は月ごとにバラバラになりがちなので、見積もり依頼のたびに探し回らなくて済むよう、A4のファイルボックスに1年分をまとめて保管しておくと手続きがスムーズになる。
ステップ2:複数の新電力に見積もりを依頼する
高圧電力の料金は個別見積もりが基本だ。少なくとも3〜5社に見積もりを依頼して比較しよう。見積もり依頼は無料で行えるのが一般的だ。
見積もりの際には以下の書類を求められることが多い。
- 直近12か月分の電気の検針票(または料金データ)
- 電気の使用状況(稼働時間、季節変動など)
- 受電設備の仕様
ステップ3:見積もりを比較して電力会社を選定する
各社から届いた見積もりを比較して、最も条件の良い電力会社を選定する。比較のポイントは以下の通りだ。
- 年間の削減額:基本料金と従量料金の合計で年間いくら安くなるか
- 契約期間の縛り:最低契約期間はどれくらいか。長期契約で単価が下がるケースもある
- 解約条件:中途解約時の違約金はあるか
- 再エネ比率:環境配慮を重視する企業は、再エネ電力プランの有無もチェック
- 付帯サービス:デマンド管理サービスや省エネコンサルティングの有無
契約更新の半年前を目安に動き始めよう。高圧電力の切り替えには見積もり取得から契約書締結まで時間がかかることがある。また、現在の電力会社への解約通知が1〜3か月前に必要な場合もあるため、余裕を持ったスケジュールで進めよう。
ステップ4:新電力会社と契約を締結する
電力会社が決まったら契約書を取り交わす。新電力会社が旧電力会社への解約手続きを代行してくれるケースが多いため、自分で解約連絡をする手間は基本的にかからない。
ステップ5:切り替え完了
契約手続きが完了すると、次回の検針日から新しい電力会社の供給が開始される。切り替え時に停電が発生することはなく、工事も不要だ。スマートメーターが未設置の場合は無料で交換されるが、高圧の場合はすでにスマートメーター相当の計量器が設置されていることが多い。

高圧電力の電力会社を選ぶときのポイント
高圧電力の切り替え先を選ぶ際に、特に重視すべきポイントを整理しておこう。
実績と安定性
高圧電力は事業の根幹に関わるインフラであるため、供給実績が豊富で経営基盤の安定した電力会社を選ぶことが重要だ。新電力の中にも大手商社系や石油元売り系など、母体がしっかりした会社が多い。
複数拠点の一括管理
複数の事業所を持つ企業の場合は、全拠点の電力契約を一括で管理できる電力会社を選ぶと、請求書の管理や支払い事務の効率化につながる。
デマンド管理サービス
高圧電力の基本料金はデマンド値(過去1年間の最大需要電力)で決まる。デマンドコントローラーの設置やデマンド監視サービスを提供している電力会社を選べば、基本料金そのものを下げるための対策も支援してもらえる。
どの設備がピークを作っているのかを現場で当たりをつけたいときは、分岐ごとの電流を測れるクランプメーターを使う方法もある。
再エネ電力の選択肢
RE100やSDGsへの取り組みとして、CO2フリーの電力プランを導入する企業が増えている。高圧電力でも再エネ電力プランを提供している新電力は多いため、環境配慮が企業方針に含まれる場合は併せて検討しよう。
高圧電力の切り替えに関する注意点
解約予告期間に注意
高圧電力の契約には「解約通知を1〜3か月前に行う」という条件が付いていることが多い。この期間を逃すと契約が自動更新されてしまうケースがあるため、契約更新日をカレンダーに記録して、半年前から見積もりの準備を始めるのが理想的だ。
受電設備の保安管理は継続
電力会社を切り替えても、キュービクルなどの受電設備の保安管理義務は変わらない。電気主任技術者の選任や保安協会への委託は引き続き必要だ。
新電力の撤退リスク
過去には経営悪化で電力供給から撤退した新電力もある。ただし、万が一新電力が撤退しても、地域の大手電力会社が「最終保障供給」として電気を供給する仕組みがあるため、電気が突然止まることはない。とはいえ最終保障供給の料金は割高になるため、経営基盤の安定した電力会社を選ぶことが大切だ。

高圧電力の切り替えでよくある質問
Q. 高圧電力の切り替えに工事は必要?
基本的に工事は不要だ。スマートメーターへの交換が必要な場合も、工事費用は無料で、停電も発生しない。既存のキュービクルはそのまま使用できる。
Q. 切り替え後に電気の品質は変わる?
変わらない。電力会社を変えても、送電線は従来の送配電事業者の設備を共用するため、電圧や周波数、電気の品質は全く同じだ。精密機器を多く使用する工場でも問題なく切り替えできる。
Q. 見積もりにはどれくらい時間がかかる?
検針票データを提出してから、見積もりが届くまでは通常1〜2週間程度だ。ただし、大規模な施設や特殊な使用パターンの場合はもう少し時間がかかることもある。
Q. テナントビルのオーナーでも切り替えできる?
ビル全体で高圧一括受電をしている場合は、ビルオーナーが電力会社を切り替えることが可能だ。ただし、テナントへの説明や同意取得が必要になるケースもあるため、管理会社と相談しながら進めるのがよい。
Q. 高圧電力の見積もりは無料?
ほとんどの電力会社が無料で見積もりを提供している。見積もりを取るだけで費用が発生することはないため、気軽に複数社に依頼して比較してみよう。詳しくは電力アドバイザーズの法人切り替えガイドや丸紅新電力のコラムも参考になる。
まとめ
高圧電力の切り替えは、法人の電気代を年間5%〜20%削減できる有効な手段だ。切り替え手順は、現在の契約内容を確認し、複数の新電力に見積もりを依頼して比較し、契約を締結するという流れで、停電のリスクなく完了する。
契約更新の半年前には動き出し、3〜5社から見積もりを取って比較するのが成功のコツだ。選定時には削減額だけでなく、契約期間の縛り・解約条件・デマンド管理サービス・再エネプランの有無もチェックしよう。
高圧電力の電気代は企業の経費に大きく影響する固定費だ。まだ見直しをしていない企業は、まず見積もりを取ることから始めてみてはいかがだろうか。複数社の比較が面倒な場合は、高圧電力一括見積もりサービスを活用するのも手だ。


